「彼女の反応が、忘れていた若い頃の感情を思い出させてくれました」
仕事と自宅を往復するだけの毎日に、ふと言いようのない虚しさを覚えるようになったのはいつからだったかと、ため息をつくことが増えました。
50代半ばを過ぎ、会社ではそれなりの立場になり、若い頃に想像していた自分とは違う現実がそこにありました。
気晴らしにと週末にゴルフを回ったり、少し背伸びをして高級店で食事をしたりはしたが、どれもその場しのぎの気休めにすぎず、自分一人、あるいは同じ年代の男同士でゴルフを回っても、話題は仕事の延長や愚痴ばかり。心の底にある重苦しい疲労感は、一向に消えません。
外食で美味しいものを口にしても、それを「美味しいね」と隣で自然に笑顔で共有し、自分を男性として心地よく立ててくれる存在が、今の生活には決定的に欠けていました。
日々の閉塞感をどうにかしたいとネットを見ていたとき、「交際クラブ」の存在を教えてもらいました。
最初は自分とは無縁の世界だと思っていましたが、一般的なマッチングアプリの仕組みと比較して調べるうちに印象が変わったんです。
アプリ特有の不毛なメッセージのやり取りや、会うまでの面倒な駆け引き、目的意識のズレに割くような精神的余裕も時間も、今の自分にはありません。
何より、立場上、身元が不確かな相手とやり取りしたり、知り合いに見られたりするリスクは可能な限りは回避したかったので、身元がしっかりしている人だけが利用し、余計なプロセスを徹底的に省いてくれる交際クラブのシステムが、自分には理にかなっているな、と興味を持ったのがきっかけです。
「ダメ元で、ちょっと覗いてみるだけでもいいか」くらいの軽い気持ちで、問い合わせてみることにしました。
テンカラットさんを選んだ一番の理由は、大手がやりそうな事務的な冷たい対応ではなく、一人ひとりにちゃんと向き合おうとする雰囲気をホームページから感じたからです。
いい意味での泥臭さというか、温かみがありました。
ここなら自分のペースで話せるかもしれないと思い、面談の予約を入れたんです。
面談前は、正直なところあまり期待していない気持ちもありました。
本当に望む相手と巡り合えるのか?ただ金にものを言わせるだけの浅ましい人間にならないか?そういう心が伴わないやり取りに、自分の貴重な時間やお金を使いたいとは思えなかったんです。
指定したホテルのロビーに現れた男性スタッフは、いかにもな営業マンではなく、こちらの緊張を自然にほぐしてくれる物腰の柔らかい人物でした。
規約の説明はマニュアルを棒読みするようなものではなく、要所要所に質問するタイミングを設け、こちらの疑問や不安に誠実に答えながら進めてくれるのが良かったです。
こちらの事情をただニコニコとやり過ごすのではなく、質問に対して的確に答えてくれるそのプロの姿勢に、値踏みされるような空気はなく、むしろ実績のあるビジネスパートナーと話しているような安心感を感じ、その場で入会を決めました。
入会後、会員専用ページで女性のプロフィールを確認しました。
一覧から愛嬌のある笑顔が印象的な女性を選び、面接者コメントに「礼儀正しく、肩肘を張らない自然体の人柄」とあったのが決め手で、その女性とのセッティングをスタッフに依頼しました。
当日。初めての交際クラブということもあり、待ち合わせ時間になるのを待つ間は、隠しようのない緊張と落ち着かなさを覚えていました。
プロフィール通りの人物だろうか、会話は噛み合うだろうか、そもそもこの歳のおじさんと会って本当に楽しいのだろうか・・・。
待ち合わせ時間が近づくにつれて周囲を何度も見回し、「もしかしたらこのまま現れないのではないか」という焦りが頭をもたげました。
約束の時間をわずかに過ぎた頃、女性から電話が入り、「すみません、遅れました」と申し訳なさそうな声が聞こえました。
声のした方を振り向くと、写真通りの愛嬌ある笑顔を浮かべた彼女が立っていて、ホッとしたのも束の間、本人が現れたことで緊張感が一段と跳ね上がったのを覚えています。
「はじめまして」と挨拶を交わし、予約しているレストランへ向けて並んで歩きました。
初対面の相手を前に、自分がスマートにエスコートできているかというプレッシャーが重くのしかかりました。
最初のうちはぎこちない沈黙が流れましたが、彼女のほうから自然に声をかけてくれたおかげで、強張っていた肩の力が少しずつ抜けていったのを覚えています。
店に入り、休日の過ごし方を冗談まじりに話すと、彼女は声を立てて笑ってくれました。
「もっと堅い方だと思っていました」と言われ、想定よりも気さくな返答が返ってきたことで、ようやく落ち着いて会話を楽しめる余裕ができたんです。
会う前は物静かで隙のない人なのだろうと勝手に決めつけていたんですが、食事をしながら笑う姿や表情に触れることで、文字や写真からは分からない相手の雰囲気が肌で感じられました。
若いというだけでなく、こちらの話を面白がり、適度に気遣いながらも対等に会話を楽しんでくれる。その知性と愛嬌のバランスの良さに、終始居心地の良さを感じていました。
緊張しながらも、お互いに無理のない自然なやり取りができたことが、この日の一番の収穫でした。
店を出て駅へ向かう道すがら、どちらからともなく「今日は楽しかったですね」と言い合い、連絡先を交換しました。
別れ際に無理に次の約束を取り付けるような野暮な真似はせず、「またゆっくり美味しいものを食べに行きましょう」とだけ告げて、改札へ向かう彼女の姿を見送りました。
帰り道のタクシーのなかで、食事の途中で交わした何気ないやり取りを頭の中で反芻していました。
これほど時間の経過を忘れて没頭できたのは、いつぶりだっただろう。
クラブのシステム利用料や食事代というコストに対し、得られたリターンは、翌週からの仕事に向かう明確なハリと、長年忘れていた純粋な高揚感でした。
費用対効果という大人の物差しで測っても、これほど効率的で価値のある自己投資はなかったと、今はハッキリと言えます。
もし今、日々の繰り返しや変わらない日常に物足りなさを感じているなら、自ら一歩を踏み出すことで、思いの外すんなりと変わり始めると思います。
まずはここで話を聞いてみるだけでも、そのきっかけになるはずです。
50代後半/医療関係









